天真爛漫2
2023年1月22日
駿河湾って、いいよね〜。
って言いながら、一番高い岩山の上で蜜柑を、弟子のくれた白い筋まで綺麗に
剥いた蜜柑を、口いっぱい頬張った純骨は、とにかくいい感じであった。
『今日は、気分がいいから皆で温泉と洒落込みますか。』
とか言ってみたら、弟子達は狂喜乱舞しながら
『マジっすか?いいんですか?』
『おっ母も連れて行っていいですか?』
『肛門が引きちぎれるくらいうれしいっす。いや、もう引きちぎれたっす。』
『1945年の501XXでスパルタンXですわ〜。』
って、好き勝手なことを言い出したので、
『とにかく、予約はしておいたから用意できたものから出発しま〜す』
伊豆の山中には、トラベラーなどが知る術もない秘湯が多数存在していて、
そのほとんどの場所で純骨はソワニエであった。本当のソワニエであった。
今日これから向かう宿は、何年か前に初めて訪問した時に源泉の素晴らしさも
さることながら、食事、調度品、ホスピタリティーと、全てにおいて
星みっつです!
って感じでいつか弟子達を連れて行ってあげようと思ってた温泉宿で、
それがたまたま今日になったということであった。
皆が皆、思い思いのオシャレをしていざ道中。さすがの秘湯だけあって
獣道の連続で、実際に猪とか子熊とかに沢山遭遇して、その都度弟子たちの
幻惑フォーメーションが炸裂していた。
Aだと思ってたものがBで、それが実はFだったりするから、猪なんかの獣達では
脳内がプルプルになっちゃって、何分か後にはひっくり返って身体もプルプル。
そんなこんなでやっと辿り着いた、秘湯宿ムーンライトパニック。
弟子達を見渡すと、皆喜びと興奮の入り混じった紅顔を純骨に向けている。
『さあ、行こう!』
って爽やかに暖簾を潜った。
つづく
天真爛漫
2023年1月10日
親というものは、やっぱり子供には天真爛漫な感じで、いい感じに育ってほしい
って思ってるもので、そうやって育てられた純骨は
人の何倍も飯を食らい、こと遊びに関しては、中等部にいる頃から遊郭や賭場の
常連で、
『コッチャン、今日の調子はどうだい?』
なんて、街を歩くと先々で有象無象に声をかけられるほどの天真爛漫っプリで、
彼の周りには常に沢山の人だかりができていた。
身の丈は、2mをゆうに超える長躯でいつもみんなのことを、天真爛漫な感じで
見下していた。
そんな彼もアラフォーになりました。
ある日、蒸気機関車に乗った純骨は
『シュッポー、シュッポー、シュッポー、シュッポー、シュッポッポー』
とか言いながら、有象無象を引き連れて車内を走り回ってて。
新婚旅行に向かう若夫婦、孫に会いに何時間も揺られて疲れ切っている老婆
などなど、沢山の人たちが彼らのことを
虎河豚のはらわたを食らった時のような苦々しい顔で見つめるなか、
列の先頭にいる純骨は、放屁したいな〜って
天真爛漫な感じで考えていて、脳内で考えすぎて何回目かには
『放屁したいな〜、放屁したいな〜、放屁したいな〜』
って、声に出して言っていました。
そう、天真爛漫に。
次の駅に着く合図の汽笛が鳴るタイミングまで待って、なんて
おしゃれなシンクロを狙っていた純骨は
『我慢、我慢、我慢、ガマン、ガマーン』
って、また声に出していたので周りの乗客は勿論、列を連ねている有象無象も
いや〜な気分で彼のことを見つめていると、
『見るな、見るな、観るなっ。』
って駄々を捏ねだしたので、見ないでいるとそこに彼の姿はありませんでした。
つづく
ゲラーorゲイラ
2018年1月21日
ユリ・ゲラーにスプーンをありシコ曲げられてます!
って、下からの声が聞こえてきたから、ありシコって久しぶりに聞いたなー。とか思いながら、下に降りてく準備。
全て、ありったけ、とかの意味のありシコだから(九州の方言)、営業前にそれはまずいなー。
っていうか、怒だなー。って思って、急いで2階からの階段を駆け下りたんだけど、
いつまでたっても下にたどり着けない。
霞がかってて、いつもは見えてるはずのダイニングが、この先は地獄or天国?っていうくらいに何も見えないから、
こんな時は美味しい寿司をつまみながら大吟醸ですね。って思ったけど、営業前のプレッシャー。
早く降りて、ユリ・ゲラーに喝!ですよねー。ってことで、JUMPして靄の中に飛び込んでみました。
頭を思いっきり打ち付けました。床暖房の機能がしっかりついてほの温かい石畳の上に。
移ろいゆく意識の中で東の空が燃えていました。
その空の一番いいポジションでゲイラカイトが気持ちよさそうに舞い踊ってました。
目が覚めて、スプーンを確認してからホッと一息ついたので、
昨日食べ残したホカホカ弁当の余りを口にしました。
冷めきってた。
夏のわななき
2017年7月28日
馬がずっといなないてて、それがすごく気になって、SECOMに連絡したりしたんだけど取り合ってもらえずに
ずっと外を写すモニターを見てたんだけど、小一時間何も変わらずで。
不意に馬蹄の音が大きくなって、およよという間も無く、僕の家の前にはたくさんのお侍さんたちが。
『なんで?』
って思ったけど、多分世の中って無常で、シニカルで、ライトだから、こんなこともありますよね〜
って言いながら、引き戸をギーって開けると、何万っていそうな軍勢の先頭には、魔王信長が。
わななきました。
僕は死というものを初めて意識してわななきました。
信長が自分を神格化したり、魔王と自称していたのは知っていたので、とにかくわななきました。
僕の家は、3年ローンの3回払いという感じで買った粗末な家だけど、だからこそ、そこめがけてなんでくるかね〜?
って思いました。いや、思いたくもありませんでした。
『今日より汝を儂の家来と致す。』
と言われて、汝って何?って思って、
『なんだ、チミは?』
って、ケン・シムラ風に言ったら、
『逆に、チミってなんだ?』
って聞かれて、
『チミはチミですよ。』
って言ってるうちに、魔王と僕でチミチミチミチミ、チミチミチミチミ言いだしちゃって
見かねた随分と貫禄のある側近の方が、僕を静かに輿の中に入れてくれました。
どこに連れて行かれるんだろう?
って思ったけど、どこでもいい。
今、生きてるからそれでいい。
と、いうことで7月のメニュー更新と夏休みのお知らせ、宜しくお願い致します!
河童と竜宮城
2017年5月11日
軽く年老いた河童に手を引かれ、狭い道をプルプルしながら歩いていると、
乳白色の霞のかかった海に連れてこられて何も見えない。
泳げる?
と聞かれたので、
オフコース!
となぜか元気に答えると、
頭の上に、(スシロー)って書かれたお皿を載せられて、キュッとされたら取りたくても取れないくらいに密着。マジで密着。
これで、海の中でも呼吸ができるよ〜
って言われて、そのまま手を引かれ、深海のほうへ。
暫くしてると、遊郭。お江戸の最高潮のときの吉原はこんな感じだったんだろうな〜ってほどのマジな遊郭。
入って行くと、どういう訳かすごく歓待してもらえて、いい気分。セブンイレブン。
清酒を20合ほど飲んだところで、ご馳走の時間になり、芋の煮っ転がし、筑前煮、ひじきの煮物、山形のだし、鮒寿司、なんかがいろいろと
止めどなく大皿で出てきて美味しそう。
僕はいつもプロテインばかりだからこういうのは嬉しいな〜。
って河童は言ってるけど、僕はこういうときはやっぱりシャリアピンステーキとかオマール海老のビスクとかを食べたい。
って、そんなことを考えてまわりの女中をよく見てみると、みんなけっこうなマダム。ベリーマダム。昭和一桁台のマダム。
ゆとり世代の子たちにはこういうものは作れないでしょうね〜
って言ってるけど、
そりゃそうでしょうね〜。
ってマジで思うし、負けたくない女心って、永遠ですか?永遠ですか?って聞きたくなったけど、聞けず。
取り皿がないですね〜。
って、河童に聞くと、
あるじゃん〜
って言われて、河童は、頭の上にある皿をペリッと剥がして、裏面を僕の目の前に、目から5㎝くらいのところに翳してくる。
近すぎると見えるものも見えないよ〜。
なんて、哲学的なことを言って少し離して見てみると、
(魯山人)
って黒いマジックで書いてあった。
僕のは(スシロー)。
さすが河童だな〜。
って思ったところで、ヒャッと我に返り、2階の階段をプルプルと降りて行く。
なんか、甘いものが食べたいな〜。
って思って、お客様にもらった、GODIVAのチョコレートを食べる。
苦かった。